2018年歌舞伎マイベスト10を振り返る

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2018年は毎月歌舞伎座、たまに博多座・松竹座・南座に遠征もして、贔屓の役者さんの後援会の集まりにも参加して、充実した日々でした。

特に印象深かった十の演目について記録しておこうと思います。松嶋屋さん贔屓なのが滲み出ていますがそこはよしなに。

長くなったので目次おいておきます。

 

仁左玉コンビ沼に転がり落ちた演目。2/3に観に行って、幕間の時間で別日の切符を買い足したのはいい思い出。

そもそもかわいい女の子が好きなのですが、玉三郎さんの演じるお軽は完全にそれだった。儚げで弱くて守られる女の子、が愛する男の人のために身を売る、その強さと弱さの両面。

お兄さんは本懐を遂げられそうだからいいけれど、夫も亡くし父親も亡くしたお軽は、あれからなにをよすがに生きていくのだろう。そんなことを考えながら観ていた。

仁左衛門さんの平右衛門、全体的に妹に激甘なお兄ちゃんという感じがするんだけど、「死んでくれ」と妹に哀願するそのスイッチの切り替え方が、あくまで一人の武士(足軽)としての使命が優先される、というかそれしか見えてないんだなと思った。

歌舞伎って役者さんの技量はもちろんだけど、ベースになる脚本が本当に厚みがあっておもしろいんだよな。

 

そういえばこの演目は新市川染五郎さんも出ていて、花道の真横から彼を見上げて穴が空くほど見つめたのもいい思い出。

2/14突然の行幸であり僥倖。いやほんとにまさか天覧歌舞伎に自分が同席する日がくるとは。ラッキーでした。

 

仁左玉熱引きやらずというかむしろ加熱。

ツイートに書いていたことがすべてだった。笑 三月の筋書きの、神田祭のお写真(もちろんご両人セット)のところに仁左衛門さんのサインいただけたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

仁左衛門さんが一世一代と銘打たれたので、私も全力で観劇した月。頻度がすごかった。

一人二役、しかも言ってしまえば小物の悪人と、スケールの違う大悪人を演じる振り幅の大きさ。

12月南座でも確信したけど、私は仁左衛門さんと時蔵さんの組み合わせも硬派でなかなか好き。時蔵さんのうんざりお松、媚びているんだけど下品じゃないという素晴らしいバランスでよかった。

梅丸さんことまるるブームはこの辺りから火がつく。亀蔵さんはお声が素晴らしいので、耳にした瞬間嬉しくなっちゃう。

太平次は人殺しが楽しくてやっているわけで、それはそれで本人にとっては幸せなんだろう。他に生きていく手段がないとも言えるのかな。

 

5月は菊五郎さんの弁天小僧も観たのでどちらを入れるかめちゃくちゃ悩んだ。。でも『切られの与三』は七之助さんの立役としての可能性を存分に堪能した演目だったのでこっち。あと梅枝さんの”深川の遊女”に対する謎の説得力…!

『桜の〜』のときにも思いましたが、七之助さんは抑圧からの解放と死への希求が似合う。まだなんの苦労も知らないお店のお坊ちゃんだったときの与三郎が、無邪気な幼い声で「死にたーい」と言ったとき、心臓が跳ねました。そしてどこまでも落ちていく与三郎。希望は、絶望のための伏線でしかない。

 

6月の博多座遠征、おいしいもの食べて役者さんのご出勤を目撃してたのしかったな。俊寛を入れた理由は、最後に一人残される仁左衛門さんがあまりに美しすぎたからです。

光の加減だと思うのだけど、仁左衛門さんの目がまるで海の水面を反射してるように蒼く見えた。

頂いた切符、仁左衛門さんの冨樫を真向こうから観られるベスポジ席で大変堪能させていただいたのだった。仁左衛門さんの冨樫は迫力がありすぎて私が弁慶だったらあっさり口割らずにはいられないと思う。

Twitterで仲良くしてくださってるやたらと好みのかぶるお姉さんことmiseryさんと初桟敷席!桟敷席、+2000円くらいでこの体験できるなら安い…と思ったのでまた別記事にする予定。歌舞伎仲間と観劇めちゃくちゃ楽しかったな、、

十八代目勘三郎さんの追善興行ということもあって大変賑々しかった。七之助さんの揚巻も美しかったし、仁左衛門さんの助六は言うまでもなく最高に格好よかった。

お役が世代を超えて引き継がれているのを目撃するのも歌舞伎の醍醐味だと思うので、そういう意味でもとてもメモリアルな月だったな。
しかし助六は地味にめちゃくちゃ筋肉使う大変なお役だろうな…。

 

とはいえやはり仁左衛門さんには関西のお役もやってほしい…という気持ちをベストタイミングで昇華させてくれたのが封印切。

封印切より先に新口村観ちゃってたので、そこに至るまでを観れてよかった。仁左衛門さん、やはり和事のなよっとした坊っちゃんがお上手。あとがんじろはんに追い詰められて最終的に公金の封印を切るわけですが、そのやり取りの間が絶妙で、上方の空気感に惚れ惚れしました。

南座秀太郎さんを観られるのが本当に嬉しい。秀太郎さんは唯一無二のポジションで、置屋の女将とかなさるともう超絶品なのだけど、あの存在をどうにか継いでいってもらいたいなあ。
ちなみにこの月は左團次さんの毛抜もあったんだけど、それもまたよかったな…。

 

  • ぢいさんばあさん(12月南座

仁左衛門さんの伊織とと時蔵さんのおるん。いちゃいちゃする場面がありつつも品格を保って、下品にならないようにしなくてはいけないので、時蔵さんで観られてよかった。清潔な色気を醸し出してらした。

しかしゴミついてるよ、やだホクロですよ、のくだりをこのお二人で観るとにやけがとまりません。

 

実は鷹之資さんと千之助さんの三社祭とかなり悩みました。長い長い午後の部のトリを飾る、若いお二人のフレッシュなエネルギーに満ちた舞踊だったので、あちらも観られてよかった。千之助さん、松嶋屋を継がれる方として期待してますし、舞踊が正直思っていたよりお上手でつい目で追ってしまった…!

という中でいがみの権太を選んだのは、仁左衛門さんと秀太郎さんの夫婦役があまりに素晴らしかったから。というより秀太郎さん演じる小せんの引っ込み、涙なしに観られなかった!

仲良し夫婦、仲良し家族が主に夫側の都合で引き裂かれるのはままあるけど、小せんの権太への視線が、恨むでもなく縋るでもなく、その気丈さに胸をつかれた。

ワンピース歌舞伎を観てないので、現代モノ?は初めて観たのだけど、思っていたよりかなりよかった。古典主義者なのが覆った。笑

多分脚本のまとめ方のうまさと、キャスティングに因っていると思う。NARUTOはアニメをちょっと観てだいたいキャラクターを知ってたけど、誰まで出してどのタイミングで終わるんだろうと疑問だった。

巳之助さんのナルトがちゃんと声までナルトで、隼人さんのサスケちゃんはちゃんと佇まいがサスケちゃんで、梅丸さんのサクラちゃんは原作より乙女で可愛すぎて一気に好きになった。あとカカシ先生の声、イタチ兄さんの風貌、猿弥さん笑三郎さん笑也さんの伝説の三忍……よくもまあこのタイミングでここまでキャスト揃えたなーと。

続編があれば観に行くなー。原作テニプリテニミュとはまた違う原作に対するリスペクト、再現度だった。

 

以上、今までの人生で一番歌舞伎を観た年の振り返りでした。さすがに長文すぎたしほぼ毎月仁左衛門さんのことばかり書いている。。

2018年は高麗屋さんの三代襲名ということもあって全体的に大きな演目が多く、見応えがあった。ランクインしてないけど8月歌舞伎座では推したち(市川團子さん、市川染五郎さん)がリアル天使になって私が召されたのも懐かしい。

2019年も引き続き歌舞伎充できるように頑張って働くぞ。