2017年にインプットしたものまとめ

あけましておめでとうございます。
昨年はこのブログを1か月に1回は更新するというゆるい目標のもとゆるっと書き、色々な方に読んでいただけてたまに読んだよ報告や感想などいただけて、励みになりました。
長い間まとまった文章を書くという行為から離れていたので、リハビリのつもりで書いていたのですが、書きたいという欲求への刺激に対してここ数年の間ではもっとも敏感になることが徐々にできつつあるので、今年も虚実入り交えて続けていきたいと思います。お付き合い、どうぞよろしくお願いします。


確かこの4年ほど、「毎月10以上、年間120以上の物語を摂取する」という目標を掲げていて、読んだもの観たもの聞いたものはすべて手帳に記録しているのですが、ここで整理することで「こんなものを好んでいる人間ですよ」ということが伝わり、かつ自分の振り返りにもなるかなと思うのでちょっと総括してみます。

総論

1年間で摂取したのは135作品。そのうち本・映画・歌舞伎で102作品ということで、これらで75%くらいを占めていました。

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去年は突然歌舞伎を観に行く義務感のようなものに駆られ*1、特に下半期はチケット発売と同時に購入を繰り返すなど、何かに憑りつかれたかのように劇場に通っていました。その印象が強かったので歌舞伎ばっかり観ていたような気がしていたのですが、整理してみたら本33冊、映画34本、歌舞伎35作ということで意外とそんなに変わりませんでした。

各論

歌舞伎

35作品のうちトップ3を選ぶとしたら。基準が非常に難しいのですが、舞踊というよりも演劇面により重きを置いて判断するのであれば、『野田版 桜の森の満開の下』(八月納涼歌舞伎@歌舞伎座)、『仮名手本忠臣蔵』(十一月歌舞伎@歌舞伎座)、『人情噺文七元結』(十二月顔見世@京都ロームシアター)でしょうか。
歌舞伎っていろんな観方ができるのですが、私はやはり物語として摂取している以上話の展開やセリフに意識を向けがちで(そうでない場合は例えば役者さんの綺麗さ、演出、舞踊の振り、お囃子の音楽など色々あります)、その点でこの3作品は、未だに思い出す印象的なシーンをたくさん持っていたように思います。
基本的には古典が好きなので、近現代劇はあまり好んで観ないのですが、『桜の森の満開の下』についてはnoteで書いた通り色んな”たくらみ”を深読みしたり考えたりするのが楽しく、刺激的な作品でした。「鬼」というテーマに興味があるのでそこも引っかかったポイントかな。
note.mu

仮名手本忠臣蔵』と『人情噺文七元結』については、観ている側の感情を揺さぶる構成があまりに巧みで、それを演じる役者さんたちの演技があまりに見事で、忘れられない作品になりました。『仮名手本忠臣蔵』では、美しさって整然としたものと乱れたものと両方あるよなあということを思いながら、その救いのなさが色っぽく映りました。『人情噺文七元結』は泣いたり笑ったり忙しない、典型的な世話物。言葉のボリュームに圧倒されながら楽しみました。

今年も「少しでも気になったら観に行く」というスタンスは変えずに、若手層が出演する作品まで手を広げつつ、観た後に自分の中に積もるものを確認しながら観劇していきたいです。

映画

意外と観てるんですよね、映画。大学生の頃に比べれば減ってきていますが。劇場に行くよりも、Amazonプライムや機内で観ることのほうが多いです。
去年のTOP3は『LA LA LAND』『たかが世界の終わり』『作家、本当のJTリロイ』かな。どれも珍しく劇場で観たものですね。『LA LA LAND』についてはこのブログでも書きましたが、相変わらずサントラを聞くとうっとなるし、苛まれている映画です。お願いだからみんなデートムービーにしないで、個々人で観て過去に思いを馳せてその夜は病んで。
『たかが世界の終わり』はタイトルがあまりに気になって観に行きました。レア・セドゥが好きなのもあって。映画で描かれるのは家族のたった数時間の出来事なのに、それまでの何十年もの記憶や感情に思いを馳せてしまうつくり。「家族って、一番近くにいる他人だよね」と思える人々には、観ていて居心地が悪くなるくらい思い当たる節がたくさん出てくるんじゃないでしょうか。
『作家、本当のJTリロイ』は、吐き続けた嘘の数だけ、ばれた時に失うものが多いということをあまりに生々しく見せてくる映画。ということも考えつつ、「存在している/いない」って何を以ていえるのだろう、例えば十年以上前に会ってからもう二度と会っていない、生きているとも死んだとも聞かない人について、私の知らないどこかで今日も生きている=存在している、と言い切ることができるのだろうか?と考えました。答えはない。たぶんみんなどこかで騙されたがっているのだよね。

本と言いつつ歌舞伎関連のものを読んでいることが多いので、それを除外したTOP3を選んでみます。

前述した歌舞伎『桜の森の満開の下』の原作。坂口安吾って堕落論をはじめとした評論のイメージで、『白痴』などの物語は読んだことがなかったのですが、一貫して屈折した女性観がとても面白かったです。『夜長姫と耳男』は幻想的で残酷な感じ。谷崎潤一郎よりも酔ってなくて、三島由紀夫よりも寓話的、というポジションなのではないかと思っています。

水いらず (新潮文庫)

水いらず (新潮文庫)

たぶん実家から持ってきて手元にあったので読んでみました。ちょうどフランスに旅行に行った後で、パリが恋しかったので、この本の中の物語の黴くさい感じはとても心地よかった。今プルーストの『失われた時を求めて』を読み進めていて、これまで外国文学ってあまりきちんと通っていないので、今年は体系的に読みたいなと思っています。

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

去年どハマりしたドラマ『カルテット』の脚本家の坂元さんの著作。衝動買いしました。読み易いのですぐに読み終えてしまうのが勿体ないくらい面白かったです。往復書簡、つまり手紙やメールのやり取りだけなのにきちんと物語が進んでいくのがすごい。なかなか時間を進めさせることって難しいと思うので。カルテットもう一度観たいなあ。

その他

記録を眺めて思い出したことをつらつらと書き連ねていきます。

  • 銀座エルメスの展示がお気に入りになりました。「エルメスの手仕事」展も観に行って、カレ(スカーフ)製作の工程のお話をうかがったり。無料だし、銀座はよく行くのでふらっと立ち寄らせてもらうことが多いのです。
  • 5月には根津美術館に燕子花図屏風を観に行きました。お庭の燕子花もとても綺麗でした。
  • 食事という体験に興味を持ち、辰巳芳子さんの『家庭料理のすがた』、木村俊介さんの『料理狂』、サヴァランの『美味礼賛』、美術手帖11月号の『新しい食』等いろいろと読みました。また別の機会に書こうと思いますが、去年は「(味もさることながら)知的体験として通いたいお店」を見つけ、ときどきお邪魔しています。味覚を言葉にするのってなかなか難しいので、チャレンジしていきたい。
  • 年末にAmazonプライムで『少女革命ウテナ』を一気見しました。放映当時幼かったのであまりちゃんと覚えていなかったのですが、ウテナとアンシー、樹璃さんと枝織さんのことを考えると胸が苦しい…。『輪るピングドラム』が大好きなのですが幾原監督ほんとうにすごいし、寺山修司を読まなくてはと思っています。


今年も感情を揺さぶられるものにたくさん出会えますように!

*1:これまでも年に数回は観に行っていたのだが、八月の歌舞伎座を観て「歌舞伎って何なんだ?何の条件を満たせば歌舞伎と言えるんだろう?」と思うようになり、それを考えるためには数を観なくてはならない気がして通い詰めたのだった